「資金調達の予定がないので、事業計画は必要ありません」
創業支援の場面では、こうした声を耳にすることが少なくありません。
たしかに、事業計画というと、金融機関や投資家に向けて提出する“お堅い資料”というイメージがあるかもしれません。
しかし、実は融資や出資の予定がまったくなくても、創業時には事業計画が不可欠です。それはなぜでしょうか?
事業の“設計図”を持たずに始めるリスク
例えるなら、事業計画のない創業は「地図もコンパスも持たずに知らない土地へ旅に出る」ようなものです。
最初は順調に見えても、やがて道に迷ったり、目標を見失ったり、何より「何に困っているのか」すらわからなくなる可能性があります。
創業時はやることも多く、判断の連続です。ここで判断軸が曖昧だと、事業の立ち位置や方向性がぶれてしまい、資金・時間・人材といった貴重なリソースが無駄になることも。だからこそ、事業計画は“誰かに見せるため”ではなく、“自分のために書く”べきものなのです。
創業時に押さえておきたい「事業計画の4つの機能」
1. 方向提示:ビジョンと目的を明確にする
まず最も重要なのは、事業を通じて「何を成し遂げたいのか」を言語化することです。
理念・ビジョン・目標・ターゲット顧客などを整理することで、自身やチームの中で“立ち返る軸”ができます。迷ったとき、何を優先すべきかの判断基準になるのです。
2. 戦略立案・実行管理:夢を現実に変える設計図
目標を掲げるだけでは成功できません。
それを「どうやって達成するか」という道筋を描くのが戦略であり、数値計画やKPI、販促・採用・投資の計画も含まれます。
特に創業直後は日々の業務に流されがちなので、最初にしっかりと計画しておくことで、行動に一貫性が生まれます。
3. リスク分析・改善評価:冷静な自己点検の道具
どんなに素晴らしい計画でも、リスクや不確実性はつきものです。
競合、法規制、需要の不確実性、資金繰りなど、あらかじめリスクを洗い出しておくことで、不測の事態に備えることができます。
さらに、事業が進む中で「計画と実績の差異」を冷静に評価し、軌道修正できる仕組みも重要です。これは単なる反省ではなく、事業を柔軟に成長させる力になります。
4. 対外説明・資金調達資料:信頼を得るためのツール
最後に、事業計画は外部への説明資料としても重要です。
融資や出資を受ける予定がなくても、取引先、士業、行政、補助金申請など、多くの場面で「事業の考え方」を問われることがあります。
きちんと整理された事業計画は、あなたの信頼性を高める“名刺以上の資料”になるのです。
計画は「作って終わり」ではない
事業計画は、一度作ったら終わりという「静的な書類」ではありません。
むしろ、変化する経営環境や成長フェーズに応じて、柔軟に見直し続けるべき“動的な経営ツール”です。
定期的に実績と計画を照らし合わせ、想定と現実のギャップを可視化することで、次の打ち手を見出す――
この振り返りと更新のサイクルこそが、事業計画を生きた指針として機能させる最大の要素です。
事業計画の策定・管理支援も承っております
当事務所では、創業期の事業計画の策定を含む、経営支援サービスを提供しています。
「どこから手をつけてよいかわからない」という段階でも問題ありません。
ヒアリングを通じて、事業の軸を整理し、無理のない計画に落とし込むお手伝いをいたします。
また、事業計画の策定にとどまらず、予実管理・KPI設計・数値モニタリングの導入支援といった「計画を日常業務に活かすための管理手法」のノウハウも提供しています。
創業の熱意や想いは、事業計画に言葉として落とし込むことで、初めて行動に移す“地図”となります。
融資がなくても、出資者がいなくても、事業計画は、未来の自分と会社を守る武器になります。
事業の出発点に、まず「考える」「書く」時間を確保してみませんか?